イメージフォーラムで上映中の『WANDA/ワンダ』(1970年)をみました。
粗い粒子のフィルムの質感をそのまま残して修復した映像が好印象です。
監督、脚本、主演を務めたバーバラ・ローデン(1932-1980)についても興味を持ちました。
30歳を過ぎ、彼女は私生活で結婚した映画監督「エリア・カザンの妻」と呼ばれることや女性らしさを売りにしていた自身の「アイデンティティ」や「自己評価の低さ」、目標を見いだせない「従順な女性像」への疑問などからこの映画を制作したといわれています。
彼女の映画業界へのメッセージ(暗喩)も含まれていて「映画監督と女優」の関係を映画では「悪党と共犯者」に重ね、視点を変えると更に面白い見方が出来ます。
この映画は制作後、奇跡的な経緯をたどります。
1971年にカンヌ国際映画祭で唯一上映されたアメリカ映画であり、同世代の女優や映画監督に支持されたものの、本国では全く相手にされない作品となった。
時は流れ、2007年にハリウッドの書庫に放置されていたオリジナルネガフィルムが発見される。
その後マーティン・スコセッシ(映画監督)やGUCCIの支援を受けて修復された。
修復版は、ニューヨーク近代美術館や国際映画祭で上映され再び注目をあびる。2017年には、アメリカ国立フィルムアーカイブに永久保存される。
この映画で用いられた手持ちの16ミリカメラを用いたフレーミング等の撮影スタイルは、のちのアメリカのインディペンデント映画に大きく影響しています。
車内のカットのバリエーションや、ラストシーンのカットが特に気に入っています。
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